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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)3904号 判決

国籍

朝鮮慶尚北道猛徳郡猛徳面南西洞

住居

東京都豊島区池袋二丁目一一四四番地 堀悦子方

(現在金沢刑務所在所)

無職

松本信吉又は大友信吉こと

姜徳寿

大正一三年八月一五日生

本籍

福岡県京都郡行橋町宮市二二番地

住居

東京都板橋区板橋町四丁目一〇八六番地

飲食店手伝

相原一郎こと

松下利夫

大正一〇年二月一〇日生

本籍

東京都板橋区大谷口町一〇三〇番地

住居

同都同区板橋町九丁目二二三六番地 寿荘内

無職

秋山光男又は相原光男こと

坂本光男

昭和八年九月二三日生

右の者に対する各窃盗、同未遂被告事件について昭和二九年一一月九日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人等の負担とする。

理由

被告人等三名の弁護人堀嘉一の上告趣意及び被告人姜徳寿の上告趣意は末尾添附の別紙記載のとおりである。

被告人姜徳寿の上告趣意について。

所論は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条に規定する適法な上告理由にあたらない。

弁護人堀嘉一の上告趣意について。

所論は憲法三七条違反を主張するが、記録に徴すれば、原審は、昭和二九年八月二七日、控訴趣意書提出の最終日を同年九月二九日と指定し、その指定通知書と共に、弁護人を選任するか否かの照会書を被告人等三名に送達し、なお当時被告人松下利夫には弁護士古屋東が弁護人として選任届出がされていたので同弁護人にも右最終日の指定通知書を送達したところ、被告人姜徳寿は、同年八月二八日右弁護士古屋東を弁護人に選任の届出を提出し、右控訴趣意書提出期間内に被告人姜徳寿並に同松下利夫は、自ら控訴趣意書を提出すると共に、被告人松下利夫のためにはその弁護人古屋東からも適法に控訴趣意書が提出された。又被告人坂本光男については、同被告人は控訴趣意書提出期間内たる同年九月二四日自ら控訴趣意書を適法に提出すると共に、自己の弁護人は自ら選任する旨の回答を裁判所に提出した。然るに、同年一〇月一日に至り、被告人姜徳寿及び同松下利夫両名の弁護人古屋東から、右両名に対する弁護を辞任する旨届出でた。一方被告人坂本からは控訴趣意書提出期間を経過するも弁護人選任の届出がなく裁判所に対し弁護人選任の請求もしなかつたので、原審は、本件が必要的弁護事件であるに鑑み同年一〇月四日被告人等三名の為弁護士上野利喜雄を弁護人に選任した上、公判期日を同年一〇月二八日と指定し、被告人等三名に同日の召喚状を送達したが同月二七日に至り、原審は、被告人松下利夫、同坂本光男の関係において、弁護人上野利喜雄を解任し、被告人松下利夫のために、弁護人大久保銅三を、被告人坂本光男のために、弁護人新崎武外を弁護人に選任し、同年一〇月二八日の公判期日には被告人等の右各弁護人、及び被告人姜徳寿が出廷し、被告人等及び前記弁護人古屋東提出の各控訴趣意書に基き弁論をし結審した事実を認めることができる。してみれば、原審は何ら被告人等の弁護権を制限した事実は存しない。故に原審に被告人等の弁護権を制限した事実の存することを前提とする所論違憲の主張はその前提を欠き採用することはできない。

なお、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて刑訴四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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